はじめに
前回はスクラッチ開発の特性と、向いている業務・向いていない業務について整理しました。
今回はその対極に位置づけられがちな パッケージソフトおよびSaaS に焦点を当てます。
「パッケージやSaaSは失敗しにくい」
そう考えられがちですが、実際には導入後に現場から不満が噴出し、使われなくなるケースも少なくありません。
本記事では、パッケージ/SaaS導入が失敗する典型的な理由と、情報システム担当者が事前に確認すべき観点を整理します。
「楽に導入できる」という誤解
パッケージやSaaSが選ばれる最大の理由は、「早く・安く・簡単に導入できそう」という期待です。
しかし、この期待そのものが失敗の入口になることがあります。
業務設計を省略してしまう
スクラッチ開発では必ず行われる業務整理や要件定義が、パッケージやSaaSでは軽視されがちです。
- 「標準機能があるから大丈夫」
- 「他社も使っているから問題ない」
こうした判断で導入を進めると、業務とシステムのズレが導入後に顕在化します。
カスタマイズ前提で考えてしまう
本来、パッケージやSaaSは「標準機能をどう使うか」が重要です。
しかし実際には、
- 自社業務に合わせて画面を変えたい
- 独自ルールを実装したい
といった要望が次々に出てきます。
結果として、
- 高額なアドオン開発
- バージョンアップ不可
- SaaSの利点を失う
といった状態に陥ります。
標準化できる業務・できない業務
パッケージ/SaaS導入の成否は、「業務を標準化できるか」に大きく左右されます。
標準化しやすい業務
以下のような業務は、パッケージやSaaSとの相性が良い領域です。
- 会計・経理
- 勤怠・人事管理
- CRM / SFA
グループウェア
これらは多くの企業で共通点が多く、業界標準プロセスが成熟しているためです。
標準化が難しい業務
一方、次のような業務では注意が必要です。
- 会社独自の評価・報酬制度
- 特殊な商流や契約形態
- 例外処理が多い業務
これらを無理にパッケージに当てはめると、現場負担が増え、形骸化します。
導入後に表面化する運用ギャップ
パッケージ/SaaSの問題は、稼働後に顕在化することが多い点にあります。
現場の業務フローとの不一致
- 二重入力が発生する
- 例外処理が手作業になる
- システムを使わない回避ルートが生まれる
これらは、業務とシステムの設計が噛み合っていないサインです。
変更に弱い体制
SaaSは頻繁に仕様変更や機能追加が行われます。
それ自体は利点ですが、
- 社内マニュアルが追いつかない
- 利用部門への説明が不足する
と、逆に混乱を招くこともあります。
情報システム担当者が見るべき選定ポイント
パッケージ/SaaS導入を成功させるために、以下の観点が重要です。
- 自社業務のどこまでを標準に寄せられるか
- カスタマイズをしない前提で業務を再設計できるか
- 導入後の運用・教育・定着まで見通しているか
- 将来の業務変更にどう対応するか
「今便利そうか」ではなく、「数年後も使い続けられるか」という視点が不可欠です。
方式を組み合わせるという現実解
実際の企業システムでは、
- 基幹業務はパッケージ
- 周辺業務はSaaS
- 独自領域はスクラッチ
といった ハイブリッド構成 が一般的です。
方式を一つに決めることが目的ではなく、業務ごとに最適な方式を選ぶことがIT導入の本質です。
次回予告
次回は 「方式をどう組み合わせるか ― 現実的なIT導入戦略」 をテーマに、
スクラッチ・パッケージ・SaaSをどう整理し、全体設計するかを解説します。