「オンプレミスからクラウドへ移行したいが、何から始めればいいのか分からない」
これは、情報システム担当者の方から非常によく聞く悩みです。
クラウド移行は、単にサーバを移すだけではなく、
- 現行システムの棚卸し
- 移行方式の選定(Lift & Shiftなど)
- セキュリティと運用設計
- 移行後の保守体制
まで含めて設計しないと、移行後に「運用が回らない」「想定外の費用が増えた」という失敗につながります。
この記事では、クラウド移行の進め方を、現場目線でわかりやすく整理します。
関連:クラウド移行の全体像は連載で解説しています
本記事は「移行の進め方(全体手順)」にフォーカスしていますが、クラウド移行の考え方や方式については、以下の連載で体系的に解説しています。
オンプレミスからクラウドへ ― 成功する移行戦略
第1回:なぜ今クラウド移行が求められるのか
第2回:クラウド移行の種類 ― IaaS, PaaS, SaaSの違い
第3回:まずは Lift & Shift ― 現実的なクラウド移行の第一歩
第4回:Lift & Shift 後に見直すべき設計と運用
第5回:段階的モダナイズとクラウド移行の成功戦略
あわせて読むことで、移行の判断がより現実的になります。
クラウド移行でよくある失敗
まず、失敗パターンを知っておくと、移行計画の精度が上がります。
- サーバ移行だけを目的にしてしまい、運用設計が抜ける
- 移行対象の棚卸しが甘く、後から追加作業が増える
- クラウド費用が予想以上に膨らむ
- 移行後に障害が起きても対応できない
- 保守を委託していたベンダーと揉める
クラウド移行は「技術」だけではなく、業務・運用・体制まで含めたプロジェクトです。
クラウド移行の進め方(全体手順)
ここから、現場で使える形で手順を整理します。
STEP1:移行目的を明確にする
最初にやるべきことは「目的の言語化」です。
よくある目的は次の通りです。
- サーバ老朽化(EOS/EOL)対応
- BCP対策
- 運用負担の削減
- 拡張性(スケール)確保
- セキュリティ強化
目的が曖昧なままだと、移行方式や優先順位が決められません。
STEP2:現行システムを棚卸しする
クラウド移行の難易度は、棚卸しの精度で決まります。
最低限、次の情報を整理します。
- サーバ一覧(役割、OS、スペック)
- アプリケーション構成
- DBの種類とバージョン
- 外部連携(API、FTP、メールなど)
- ネットワーク構成
- 監視・バックアップの仕組み
ここが曖昧だと、移行後に「動かない」「つながらない」が発生します。
STEP3:移行方式を決める(Lift & Shift / Replatform / Refactor)
棚卸しができたら、移行方式を決めます。
代表的には次の3つです。
- Lift & Shift:現行をほぼそのままIaaSへ移す
- Replatform:一部をPaaSなどへ載せ替える
- Refactor:アプリを作り直してクラウド最適化する
最初から完璧を目指すと移行が止まるため、現場ではまずLift & Shiftが現実的な選択になることが多いです。
この考え方は、連載でも詳しく解説しています。
第3回:まずは Lift & Shift ― 現実的なクラウド移行の第一歩
STEP4:移行対象の優先順位を決める
すべてを一度に移行するのはリスクが高いです。
現場では、以下の観点で優先順位を決めます。
- 重要度(止まると困るか)
- 移行難易度
- 依存関係(他システムとのつながり)
- 移行後の運用負担
おすすめは「重要度が低く、移行しやすいものから始める」です。
STEP5:クラウド側の設計(ネットワーク・セキュリティ)
移行の中盤で必ず必要になるのが、クラウド側の基本設計です。
- VPC設計
- サブネット設計
- セキュリティグループ
- VPN/専用線の要否
- IAM(権限)
この部分が弱いと、移行後に「アクセスできない」「事故が怖くて運用できない」状態になります。
STEP6:移行手順を作り、テストする
移行は「作業手順」が命です。
- 移行前のバックアップ
- 移行手順(サーバ・DB・アプリ)
- 切り替え手順(DNS、ルーティングなど)
- 切り戻し手順
特に切り戻しがない移行は、現場では危険です。
STEP7:移行後の運用設計をする(ここが抜けやすい)
クラウド移行で最も抜けやすいのがここです。
移行後には必ず運用が発生します。
- 監視(死活、ログ、性能)
- バックアップ
- パッチ適用
- 障害対応
- アカウント管理
移行が成功しても、運用が回らなければ業務として失敗になります。
STEP8:クラウド費用を継続的に最適化する
クラウドは使った分だけ課金されます。
移行直後は費用が読みにくいため、
- 不要なリソースの削除
- スペックの見直し
- スケジュール停止
など、運用しながら最適化することが重要です。
クラウド移行のスケジュール例(小規模〜中規模)
システム規模にもよりますが、よくあるスケジュール例は次の通りです。
- 1〜2週間:現行棚卸し
- 1〜2週間:方式決定・設計
- 2〜4週間:移行環境構築
- 2〜4週間:移行作業・テスト
- 1週間:切り替え・安定化
最初の移行を小さく成功させることで、次の移行がスムーズになります。
関連:クラウド移行の基礎は連載で体系的に読めます
クラウド移行は、断片的に調べると混乱しがちです。
基礎から順に整理したい場合は、以下の連載もおすすめです。
クラウド移行は「移行後の保守運用」まで含めて成功です
クラウド移行は、移行作業そのものよりも、移行後の運用が長く続きます。
そのため、移行計画の時点で
- 運用を誰がやるのか
- 障害時に誰が対応するのか
- 監視やバックアップをどうするのか
を決めておくことが、最終的な成功につながります。
当社の「システム開発・保守運用サービス」について
当社では、クラウド移行を含むシステム開発だけでなく、移行後の保守運用まで含めた支援を行っています。
特に以下のような課題がある場合は、ご相談いただくことが多いです。
- 社内に運用担当がいない
- 移行後の監視・バックアップが不安
- 障害対応の体制を作れない
- 既存ベンダーからの引継ぎが難しい
「移行はできたが、運用が回らない」を避けたい場合は、ぜひ一度ご相談ください。
こんな課題に困ったら 担当者が定年、退職 自社開発を行ったが、担当者が退職。設計書やマニュアルも無く、システムに詳しい担当者もいないため、引継ぎが出来ない。 システム会社が廃業 長く使っている社内システムを今後も使い続けたいが、システム開発を委...
まとめ
クラウド移行は、正しい順番で進めれば成功確率が上がります。
- 目的を明確にする
- 棚卸しを丁寧に行う
- 方式を決める(まずはLift & Shiftが現実的)
- 移行後の運用設計まで含める
- 費用最適化は継続的に行う
移行を検討している方は、まず小さく成功させる計画から始めてみてください。