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開発が終わっても、本当の戦いはそこから始まる
多くの情報システム担当者が経験していることですが、システム開発のプロジェクトが完了してリリースされると、社内から「やっと終わった」と安堵の声が聞こえます。しかし実際には、そこからが本当のスタートです。
日常業務の中でシステムを安定的に稼働させ続けるためには、運用監視、障害対応、セキュリティ対策、ユーザーサポートといった「保守運用」の仕事が延々と続いていきます。
開発は「一度の山場」ですが、保守運用は「終わりのないマラソン」です。現場のIS担当者にとっては、むしろ後者こそが日々の大部分を占める業務といえるでしょう。
システムが止まることのインパクト
では、なぜ保守運用がそこまで重要なのか。答えはシンプルです。システムが止まるとビジネスそのものが止まってしまうからです。
例えば、営業管理システムが半日ダウンしただけで、商談状況の確認や見積作成ができず、営業部門が丸一日動けない状況が起こり得ます。
ECサイトであれば、数時間の停止が売上数百万円以上の損失に直結します。さらに社外向けシステムの場合は「この会社のサービスは不安定だ」という評価が広がり、ブランド価値にも大きなダメージを与えます。
ある企業では、たった1回のシステム障害が原因で取引先からの信頼を失い、大口契約を失った事例もあります。
障害対応の人件費や復旧コストを考えると、「止めないこと」に投資する方が結果的に安上がりであることは明らかです。
こうした課題を解消したい場合は、システム開発・保守引継ぎサービスの活用が有効です。
保守運用の主な役割
保守運用と一口に言っても、その範囲は広範です。大きく分けると以下のような役割があります。
- 監視・障害対応:システムの稼働状況を監視し、アラートが出たら迅速に原因を特定・復旧する
- 予防保守:セキュリティパッチの適用、ログ確認、バックアップテストなど、トラブルを未然に防ぐ
- ユーザーサポート:利用部門や顧客からの問い合わせ対応、操作方法の説明
- 改善活動:業務効率化やユーザビリティ向上のための小規模改修、パフォーマンスチューニング
- 法令・制度対応:インボイス制度や個人情報保護法改正など、システム変更を伴うコンプライアンス対応
これらの業務は「発生したら対応する」だけではなく、発生しないように先手を打つことが重要です。
「開発より保守運用が重要」と言われる理由
システム開発は、要件定義・設計・実装・テストといったフェーズが数か月〜1年程度で一区切りを迎えます。
一方、保守運用はシステムが稼働し続ける限り、5年、10年と継続していく仕事です。
例えば、ある企業で導入した基幹システムは、開発期間は1年半でしたが、その後の保守運用はすでに10年以上続いています。
コストを比較すると、開発費用よりも累計の保守費用の方が大きくなるケースは少なくありません。
また、開発でいくら高機能なシステムを作っても、保守運用が不十分で障害が頻発すれば、ユーザーにとっては「使えないシステム」と評価されてしまいます。つまり、システムの価値を決めるのは開発ではなく保守運用の質なのです。
現場担当者の悩みとジレンマ
IS担当者にとって、保守運用は避けて通れない業務ですが、悩みも多くあります。
- 障害対応に追われて本来の改善活動に時間が割けない
- 開発ベンダーから十分な引継ぎを受けられず、ブラックボックスが残ってしまう
- 属人化しており、担当者が休暇を取ると業務が回らない
- 経営層からは「保守費用を削減せよ」と言われ、必要な投資がしづらい
こうした状況は多くの企業で共通しています。「保守運用は重要」と理解していても、十分なリソースが割かれていない現実があります。
当社のシステム開発・保守引継ぎサービスでは、ドキュメント整理から運用フロー構築まで支援しています。
まとめ:保守運用こそが企業の生命線
システム保守運用は、単なる「後処理業務」ではなく、ビジネスを支える基盤です。
- 障害を未然に防ぐこと
- 発生時に最短で復旧すること
- 変化する環境(法改正・セキュリティ脅威・業務要件)に柔軟に対応すること
これらを継続的に実現することが、IS担当者の最大のミッションといえます。
次回は、そんな保守運用の現場で実際によく起こる「失敗パターン」について掘り下げます。
どんな点でつまずきやすいのか、具体的な事例をもとに解説していきます。