第1回:なぜ今コンテナなのか ― VMとの違いと「導入すべき理由」 |現場で使えるDocker/コンテナ設計 ― 運用で詰まらないために

はじめに

ここ数年、IT業界では「コンテナ」「Docker」「Kubernetes」といったキーワードが当たり前のように語られるようになりました。
クラウド移行の文脈でも、オンプレミスの運用改善の文脈でも、コンテナは避けて通れない技術になっています。
一方で、情報システム担当者の立場から見ると「結局VMと何が違うのか」「運用負荷は減るのか増えるのか」「自社で扱えるのか」という疑問が残りやすいテーマでもあります。

本連載では、コンテナを単なる流行としてではなく、運用・保守・引継ぎまで含めた“現実の技術”として整理します。第1回となる今回は、まず「なぜ今コンテナなのか」を、VMとの違いから解説します。

コンテナとは何か

コンテナとは、アプリケーションを動かすために必要な実行環境を「ひとまとめ」にし、どこでも同じように動かせるようにする仕組みです。
ただし、ここで重要なのは「仮想マシンの軽量版」という理解だけでは不十分だという点です。

コンテナが解決しようとしている本質は、次の問題です。

  • 開発環境では動いたのに、本番環境では動かない
  • サーバーごとにミドルウェアや設定が微妙に違い、原因特定が難しい
  • 引継ぎ時に「構築手順」が再現できず、保守が破綻する

つまりコンテナは、単なる技術要素ではなく、運用の再現性を高めるための仕組みとして捉えると理解が早くなります。

VMとコンテナは何が違うのか

コンテナを語る際、必ず比較対象になるのがVM(仮想マシン)です。
両者は似ていますが、設計思想が異なります。

VMの考え方:OSごと分ける

VMは、ハードウェアを仮想化し、その上にOSを丸ごと載せます。
そのため、1台の物理サーバー上に複数のVMを動かすことができ、環境を分離できます。

ただしVMでは、VMごとにOSが存在するため、次のような負担が発生します。

  • OSパッチ適用やミドルウェア更新がVM単位で必要
  • テンプレート化しても、運用が進むと差分が生まれやすい
  • 構築手順が属人化しやすい

コンテナの考え方:プロセス単位で分ける

一方、コンテナは「OSを分ける」のではなく、OSは共有しつつ、プロセス単位で実行環境を分離する仕組みです。
このため、VMより軽量で、起動が速く、同じサーバー資源で多くのアプリケーションを動かしやすくなります。

しかし、重要なのは軽量さ以上に「環境の標準化」です。

  • Dockerfileで環境構築をコード化できる
  • 同じイメージを使えば、どこでも同じ状態になる
  • 手順書よりも再現性が高い

この特性が、運用や引継ぎに大きく効いてきます。

なぜ今、コンテナが求められるのか

コンテナが普及した背景には、単に技術トレンドというだけではない、現場側の事情があります。

理由1:リリース頻度が上がった

昔は、業務システムは年に数回の改修でも十分でした。
しかし現在は、業務要件や外部サービスの変化が早く、改修頻度が増えています。

改修が増えるほど、次の課題が表面化します。

  • 環境構築に時間がかかる
  • 本番反映のたびに手順が増える
  • 属人化した運用がボトルネックになる

コンテナは、こうした「変化の多さ」に対応するための基盤になっています。

理由2:クラウドとの相性が良い

クラウドは、サーバーの増減や構成変更が前提の世界です。
一方、オンプレ的な運用では「固定のサーバーに手作業で環境を作る」文化が残りがちです。

コンテナは、クラウドが前提とする考え方と一致します。

  • サーバーは使い捨てに近い
  • 構築はコードで再現する
  • 環境差分を極力なくす

つまり、クラウド移行を進める企業ほど、コンテナの価値が高まります。

理由3:引継ぎ・保守運用の限界が来ている

情シスや開発現場では、次のような悩みが増えています。

  • 担当者が異動・退職し、運用がブラックボックス化する
  • ベンダーが変わると改修できなくなる
  • 手順書が古く、再現できない

この問題は、システム規模が大きいほど深刻になります。

コンテナは「属人化をゼロにする魔法」ではありませんが、
運用をコード化し、再現性を上げるための武器になります。

Tips保守運用に対するプラクティスについては、「情報システム担当者のための実践ガイド」も参考にしてください。

 

コンテナ導入で得られる現実的なメリット

メリット1:環境差分が減る

「開発では動くのに本番で動かない」という問題の多くは、環境差分が原因です。
コンテナ化することで、同じイメージを開発・検証・本番で使いやすくなり、差分が減ります。

メリット2:再現性が高くなる

従来の運用では、サーバー構築は手順書頼みになりがちです。
しかし手順書は、更新されない・抜け漏れる・人によって解釈が違う、といった問題を抱えます。

DockerfileやComposeは、実行そのものが再現手順になります。
これは保守運用・引継ぎの現場で非常に大きな意味を持ちます。

メリット3:拡張や移設がしやすい

コンテナは「アプリをどこでも同じように動かす」思想のため、 サーバー移設や増設のハードルが下がります。

特に、クラウド移行やデータセンター移転の局面では、
コンテナ化が進んでいるほど移行が容易になります。

ただし、コンテナは“運用が楽になる”とは限らない

ここまで読むと「コンテナ化すれば運用が簡単になる」と思われるかもしれません。
しかし現実には、コンテナ導入で新しい運用課題が生まれることもあります。

  • ログをどう集約するか
  • DBやファイルの永続化をどう扱うか
  • 障害時に誰がどこまで対応するか
  • セキュリティや権限設計をどうするか

つまりコンテナは、運用を不要にする技術ではなく、
運用を“設計可能”にする技術です。

このあたりは第4回で、具体的に深掘りします。

次回予告

次回は、コンテナを理解するうえで避けて通れない基礎として、 Dockerの設計要素(イメージ、レイヤ、ボリューム、ネットワーク)を整理します。
情シス担当者にも分かるように、運用の観点から「どこで事故が起きるのか」まで含めて解説します。