餓死するカマスとモデリング

有名な実験の話しなのでご存知の方も多いかもしれませんが、カマスという肉食魚の実験のお話しです。水槽に空腹状態のカマスを入れ、透明なアクリル板で仕切った反対側にカマスの餌である鰯の稚魚を入れました。当然、カマスは稚魚を食べる事はできません。この後何がおこったでしょうか。

(2021年11月29日 企画推進室)

思い込みの怖さ

おなかをすかせたカマスは、何度も稚魚に突進しますがアクリル板に体当たりする事になります。

何回か繰り返すと、やがてカマスは稚魚の方に行かなくなったそうです。

その後アクリル板をとってみるもカマスは鰯の方に行かず、さらには鰯が目の前を泳いでいたとしても食べようとしなかったそうです。そうして、カマスは餓死してしまったという事です。

カマスは、餌を食べられないものだと勝手に思い込んでしまったのでしょう。

では、そういう思い込みを持ってしまったカマスは死を待つだけなのでしょうか?

この実験には、別の空腹なカマスを入れるという続きがあります。

当然、新しいカマスは餌を食べます。

そうすると、餌を食べられないと思い込んでいたカマスも勢いよく食べ始めるそうです。

人間でも知らず知らずに思い込んでいる

人間でも「そんなことは無理だ」だとか「どうせ出来ない」という思い込みや、そもそも目の前にある餌を食べようとも思わない、という事が起こっている気がします。

「そんなことは無理だ」や「どうせ出来ない」、「目の前にある餌は食べられない」という考えが「思い込みかもしれない」と自覚できれば、行動を改められるかもしれません。

しかし、そもそも自覚するというのが難しいですよね。

そんな時に役に立つのが「モデリング」です。

モデリング(英: Modelling)とは、心理学用語のひとつで、何かしらの対象物を見本(モデル)に、そのものの動作や行動を見て、同じような動作や行動をすることである。

Wikipediaより引用

餌を食べられないと思い込んだカマスは、新しいカマスが餌を食べるのを見て自分も餌を食べ始めました。これも一種の「モデリング」ではないかと思います。

心理学者のアルバート・バンデューラが「人は他者を観察し模倣することによっても新しい行動を獲得できる」という社会的学習理論というのを提唱しています。

歴史上の人物でも、尊敬する人でも、凄いなと思う人でも良いと思います。

成功した人、理想とする人。そういった人の行動をよく見聞きして、模倣していく事で行動が変わっていくはずです。

(余談ですが、アルバート・バンデューラはTVなどの暴力的なシーンがある番組に対する危険性を訴えているそうです)