テレワークにおける生産性のワナ/企画推進室

働き方改革が叫ばれながらも中々進まないと思っていた矢先、思わぬ形でテレワークが日本中に浸透しつつあります。働き方改革の目的は「労働生産性を向上させる」ことです。柔軟な働き方ができる環境づくりを通して労働生産性をあげようという事ですね。では、テレワークで生産性は上がるのでしょうか?今回は「在宅勤務における生産性のワナ」という事で生産性を下げる要因について書きたいと思います。

(2020年8月31日 企画推進室)

働き方改革とテレワーク

そもそも、働き方改革とテレワークの関係って何だったっけ?という振り返りから。

「働き方改革」とは?

日本の人口は2008年をピークに減少を続けています。人口が減れば、当然労働力不足となります。この労働力不足を解消させるためには、働き手を増やしたり、出生率を上昇させたり、そして労働生産性を向上させる必要があります。

これを実現するための政策が「働き方改革」という訳です。

関連する法律として、2018年6月29日に可決・成立し、2019年4月から施行されたのが「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」になります。

この法律は、「長時間労働の是正」、「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」、「多様な働き方の実現」という3つが柱になっていて、次の7つを具体的な取組みとして挙げています。

(1)非正規雇用の待遇差改善
(2)長時間労働の是正
(3)柔軟な働き方ができる環境づくり
(4)ダイバーシティの推進
(5)賃金引き上げと労働生産性向上
(6)再就職支援と人材育成
(7)ハラスメント防止対策

 

この中で「(3)柔軟な働き方ができる環境づくり」がテレワーク、在宅勤務に関連する取組になります。

テレワーク

日本では、平日の午前9時から8時間会社に出勤して働く、というのが今までのよくある働き方でした。

しかし、勤務時間や労働場所が固定されていると、働きたくても働けない、という人が多くでてきます。例えば子育て中の人や親の介護をしている人ですね。こういった人がどうしても退職してしまったり、就職を断念したり、というのもよくある話でした。

そこで、「(3)柔軟な働き方ができる環境づくり」としてテレワークという働き方に注目が集まりました。

テレワークとは「事業者と雇用契約を結んだ人が自宅などで働く形態」を指し、厚生労働省も「テレワークは時間と空間の制約にとらわれることなく働ける」と高く評価しています。

また、厚生労働省の調査によると、企業側もテレワークを推進することで、生産性の向上や自己管理能力の向上、労働者の健康的な生活の確保などを期待しているとの事です。

テレワークのメリットとして、通勤や移動時間が大幅に削減されるので、自由な時間や家族との交流時間を増やすことができます。これにより「仕事の生産性の向上、効率化」や「ストレスの減少」、「働き手の増加」など様々な効果が期待されています。

そして、コロナ禍の影響で、一気にテレワークが浸透し、多くの人が自宅で仕事をすることになりました。

テレワークにおける落とし穴

では、テレワークで本当に生産性はあがったのでしょうか。

私の実例ですが、テレワークになってから、「タスクの中断」が異常に多くなった気がします。せっかく集中していたのに、メールやチャット、上司からの急な依頼などによって、仕事を中断せざるをえない、そんな事が以前よりも明らかに多くなっています。

テレワークだと相手がどんな作業をしているのかわからないので、こちらの都合で一方的に仕事の依頼や質問をなげかけます。メールやチャットでは相手がメッセージを見たか、見たけど忘れているかもしれない、という事が気になって××日までに回答が欲しいと伝えるが応答がない。結局電話であの件どうなってます、と問い合わせる始末。

仕事の依頼や質問をなげかけれらた方も、急ぎかどうかわからないので、今の仕事とどっちが優先か、いつまでに仕上げる必要があるのかをチャットやメールで投げて、応答が無いから結局電話で聞くというよくわからないやり取りが発生したり。

こんなやり取りで、今やっている仕事の手を止めてしまうと、やりかけの仕事が気になって生産性が上がりません。

「マルチタスク」という言葉があります。同時にいくつもの仕事をこなす用語として使われる事もありますが、実際人間は同時にいくつもの仕事を行う事はできません。少し仕事をして、別の仕事を少しして、また別の仕事を少しして、また最初の仕事をする。こんな風に仕事を分断しながらいくつもの仕事をすすめているに過ぎないのです。

しかし、脳はタスクごとに注意を切り替えるのが困難であることが、研究で明らかになっています。多くの場合、注意の一部は中断されたタスクに集中したままで、新しいタスクに完全に切り替わらないのです。

これではテレワークで生産性を向上するという事はできませんね。

 

対策として、タスクを中断する前に、どういったタスクをどこまでやっていて、何から再開すれば良いかといったメモを書き留め、再開時にはそのメモを読むことから始めると良い、といった記事を目にした事があります。

 

いずれにせよ、テレワークも「柔軟な働き方ができる環境づくり」の万能策では無いような気がします。テレワークでも一緒にオフィスで働いているのと変わらないようなコミュニケーションの手法や、全員が別の時間帯で働いたとしても困らないようにタスクを明確化する、デリゲーションを進める、といった様々な方策を組合せ、本気で「柔軟な働き方」と「生産性向上」を目指さないといけませんね。

現在進行しているプロジェクトではいろんなITツールを試しています。いろんなチームでの声を集めて、よりよい働き方の環境を目指していきたいと思います。