第5回:段階的モダナイズとクラウド移行の成功戦略|オンプレミスからクラウドへ ― 成功する移行戦略

はじめに

本連載では、オンプレミスからクラウドへの移行について、「なぜ移行するのか」「どの形態を選ぶのか」そして「まずは Lift & Shift で始める」という現実的な進め方を解説してきました。
最終回となる今回は、Lift & Shift で移行した環境をどのように発展させ、クラウドの価値を最大化していくか、すなわち段階的モダナイズの考え方と、情報システム部門としての成功戦略を整理します。

モダナイズとは何を意味するのか

クラウド移行における「モダナイズ」とは、単に最新技術を取り入れることではありません。
業務やシステムの特性に合わせて、必要な部分だけを適切な形に進化させていくことが本質です。
すべてをクラウドネイティブに作り替えることが必ずしも正解ではない点を、まず押さえておく必要があります。

クラウド移行の段階的アプローチ

Re-host(Lift & Shift)

Re-host は、既存環境をほぼそのままクラウドへ移行する段階です。
業務影響を抑えつつ、クラウド基盤へ移行することが目的となります。

Re-platform(一部最適化)

次の段階では、構成や運用を部分的に見直します。
例えば、データベースをマネージドサービスに変更したり、バックアップや監視をクラウド標準機能へ移行するケースです。
この段階で、コスト削減や運用負荷軽減といったクラウドの恩恵を実感できるようになります。

Re-factor(再設計)

最終段階では、業務要件や将来計画に合わせてアプリケーション自体を再設計します。

ただし、これは高いコストとスキルを要するため、すべてのシステムに適用する必要はありません。
「変化が多く、競争力に直結する部分」に限定することが現実的です。

モダナイズ対象を見極める視点

段階的モダナイズを成功させるには、「どこに手を入れるべきか」を見極めることが重要です。

  • 業務変更が頻繁に発生するシステム
  • 運用コストや障害リスクが高い領域
  • 事業成長に直結するサービス

これらに該当する部分から優先的に対応することで、投資対効果を最大化できます。

情報システム部門に求められる役割の変化

段階的モダナイズが進むにつれ、情報システム部門の役割も変化します。
従来のように「インフラを管理する部門」ではなく、IT全体の方向性を設計し、選択を行う部門としての役割がより重要になります。
技術選定の基準やルールを整備し、現場任せにしないガバナンスを構築することが、長期的な成功につながります。

クラウド移行を成功させるための共通要因

  • 一度にすべてを変えようとしない
  • 移行後の姿を段階的に描く
  • 運用と人の体制まで含めて考える

クラウド移行は単発のプロジェクトではなく、継続的な改善活動として捉えることが重要です。

おわりに

オンプレミスからクラウドへの移行は、単なるインフラ刷新ではありません。
ITの使い方、運用の考え方、そして情報システム部門の役割そのものを見直す機会でもあります。
Lift & Shift を起点に、無理のない形で段階的にモダナイズを進めることが、結果として最も成功に近いクラウド移行戦略と言えるでしょう。