第4回:Lift & Shift 後に見直すべき設計と運用|オンプレミスからクラウドへ ― 成功する移行戦略

はじめに

Lift & Shift によってオンプレミス環境をクラウドへ移行し、システムが問題なく稼働している状態になると、「クラウド移行は完了した」と感じてしまいがちです。

しかし実際には、ここからが本当のスタートです。
移行直後の環境は、あくまでオンプレミス構成をクラウド上に再現したに過ぎません。
本記事では、Lift & Shift 後に必ず見直すべき設計と運用のポイントを整理します。

コスト設計の見直し

「クラウドなのに高い」という問題

Lift & Shift 後に最も多く聞かれるのが、「思ったほどコストが下がらない」「むしろ高くなった気がする」という声です。
これは、オンプレミス時代のリソース設計をそのまま持ち込んでいることが主な原因です。クラウドでは、常時フルスペックで動かす必要はありません。

リソースの適正化(Right Sizing)

CPUやメモリ使用率を可視化し、実際の負荷に合わせてインスタンスタイプを見直すことで、コストは大きく削減できます。
また、夜間や休日に利用が少ないシステムについては、停止やスケールダウンを検討することも有効です。

運用設計の再構築

オンプレミス運用を引きずるリスク

Lift & Shift 後も、オンプレミスと同じ手順で運用を続けてしまうケースは少なくありません。その結果、クラウドの自動化機能やマネージドサービスを活かせず、運用負荷が期待ほど下がらない状態に陥ります。

自動化・マネージドサービスの活用

バックアップ、監視、障害通知などは、可能な限りクラウド標準機能やマネージドサービスに任せるべきです。
人が手作業で行う運用を減らすことで、属人化やヒューマンエラーのリスクも低減します。

セキュリティと責任分界点の再確認

クラウドの責任分界モデル

クラウドでは、セキュリティはクラウド事業者と利用者で責任を分担します。
インフラの物理的な管理は事業者が担いますが、OS設定、アプリケーション、アクセス管理は利用者側の責任となる点を改めて確認する必要があります。

移行後に見直すべきセキュリティ項目

  • ネットワーク設計(公開・非公開の整理)
  • アクセス権限の最小化
  • ログ取得と監査体制

監視・バックアップの再設計

オンプレミス時代の監視ツールをそのまま使い続けるのではなく、クラウド標準の監視・アラート機能を活用することで、システム状態の把握が容易になります。
バックアップについても、取得頻度や保存期間、復旧手順をクラウド前提で再設計することが重要です。

運用体制と役割の見直し

クラウド移行によって、情報システム担当者の役割も変化します。
「サーバーを管理する人」から「サービス全体を設計・コントロールする人」へと役割がシフトしていきます。
運用を属人化させず、ドキュメント整備や権限分離を進めることで、持続可能な運用体制を構築できます。

次回予告

次回はいよいよ最終回として、クラウド移行を成功に導くための全体戦略と導入ステップについて解説します。
段階的に移行を進めるための考え方を整理します。