第2回:クラウド移行の種類 ― IaaS, PaaS, SaaSの違い|オンプレミスからクラウドへ ― 成功する移行戦略

はじめに

クラウドと一口に言っても、その提供形態にはいくつかの種類があります。代表的なのが IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)の3つです。
重要なのは、これらは「優劣」ではなく「使う順番と目的」が異なるという点です。
特にオンプレミスから既存システムを移行する場合、多くの企業はまず IaaS を選択し、段階的に PaaS や SaaS を検討します。
本記事では、それぞれの特性を整理しながら、「なぜ最初に IaaS が選ばれやすいのか」という実務視点も交えて解説します。

IaaS(Infrastructure as a Service)

概要

IaaSは、サーバーやストレージ、ネットワークといったインフラそのものをクラウド上で提供するサービスです。ユーザーはOSやミドルウェアを自由に選択・設定でき、従来のオンプレミス環境に近い形で利用可能です。代表的なサービスには、AWSのEC2、Azure Virtual Machines、Google Compute Engineなどがあります。

メリット

  • オンプレミスに近い自由度と柔軟性がある
  • 必要に応じてサーバーリソースを瞬時に増減可能
  • 従量課金により初期コストを抑制できる

利用シーン

既存の基幹システムをクラウドに移行したい場合や、カスタマイズ性の高い環境が必要なケースに向いています。また、オンプレミスからのリフト&シフトを検討する際にもIaaSは有効です。

リフト&シフトでは、既存のOSやミドルウェア、アプリケーション構成を大きく変更せずにクラウドへ移行します。
IaaSはオンプレミスと構成が近いため、移行時のリスクを抑えやすく、業務停止を最小限にできる点が大きな利点です。

そのため「最初から最適化する」のではなく、「まずは動かす」ことを優先する企業にとって、IaaSは現実的な第一選択となります。

PaaS(Platform as a Service)

概要

PaaSは、アプリケーションを開発・実行するためのプラットフォームをクラウドで提供するサービスです。OSやミドルウェアの管理はクラウド側が担い、ユーザーはアプリケーション開発や運用に専念できます。代表例として、AWS Elastic Beanstalk、Google App Engine、Azure App Serviceなどがあります。

メリット

  • 環境構築や保守作業を削減できる
  • スケーリングや負荷分散を自動で実施
  • 開発効率の向上と迅速なリリースが可能

利用シーン

新規アプリケーション開発やPoC(概念実証)の段階で活用されます。特に短期間で試作や検証を行いたい場合に適しています。
また、既存システムをIaaSで移行した後、運用が安定した段階で、一部機能をPaaSへ移行するケースも少なくありません。

SaaS(Software as a Service)

概要

SaaSはソフトウェアそのものをクラウド上で提供するモデルです。ユーザーはWebブラウザや専用アプリを通じてサービスを利用するだけで、インフラやアプリの管理は不要です。代表的なサービスには、Salesforce(CRM)、Microsoft 365、Google Workspaceなどがあります。

メリット

  • 導入が容易で即時利用可能
  • 運用・保守の負荷を最小化できる
  • 常に最新機能を利用可能

利用シーン

メール、グループウェア、CRM、勤怠管理など、業務アプリケーション全般で利用されます。特に、導入までのスピードや初期コストを重視する企業に向いています。

自社に適したモデルを選ぶポイント

IaaS、PaaS、SaaSにはそれぞれメリットと制約があります。選定のポイントは以下の通りです。

  • 自由度・カスタマイズ性が必要 → IaaS
  • 開発効率や運用負荷を軽減したい → PaaS
  • 即時利用と利便性を重視 → SaaS

重要なのは、これらを一度に決め切るのではなく、段階的に選択・見直していくことです。多くの企業では、「IaaSで移行 → 運用安定 → 必要に応じてPaaSやSaaSを活用」という流れを取っています。

次回予告

次回は「クラウド移行の課題とリスク」について解説します。セキュリティ、コスト管理、ベンダーロックインなど、クラウド導入にあたり事前に把握しておくべきポイントを具体例を交えて紹介します。