第1回:なぜ今クラウド移行が求められるのか|オンプレミスからクラウドへ ― 成功する移行戦略

はじめに

ここ数年、「オンプレミスからクラウドへ」という言葉は、もはや特別なものではなくなりました。多くの企業がクラウド移行を検討・実施し、情報システム部門にとっても避けて通れないテーマとなっています。

しかし一方で、「なぜ今、移行しなければならないのか」「本当に自社に必要なのか」と疑問を持つ方も少なくありません。本記事では、オンプレミス環境が抱える構造的な課題と、クラウド移行が求められる背景を整理し、なぜ今この判断が重要なのかを解説します。

オンプレミス環境が抱える構造的課題

設備投資と維持コストの増大

オンプレミス環境では、サーバー・ストレージ・ネットワーク機器の購入に加え、設置スペース、電源、空調、保守契約といった継続的なコストが発生します。特に問題となるのは、数年に一度訪れるハードウェア更新のタイミングです。

更新時には多額の投資判断が必要となり、結果として「まだ使えるから延命する」という判断が繰り返され、老朽化した環境を抱え続けるケースも少なくありません。

運用負荷と属人化

オンプレミスでは、障害対応、バックアップ、パッチ適用、監視などの運用作業を自社で担う必要があります。担当者が限られている場合、運用ノウハウが属人化しやすく、担当者の異動や退職が大きなリスクになります。

「その人しか分からない」「触るのが怖いシステム」は、多くの情報システム部門が抱える共通の悩みです。

拡張性と柔軟性の限界

事業拡大や繁忙期に伴うアクセス増加に対し、オンプレミスでは事前に最大需要を見込んだ設備投資が必要です。その結果、平常時はリソースが余り、コスト効率が悪化します。

逆に想定を超えた需要が発生すると、すぐに対応できないという問題もあります。

クラウド移行が加速する背景

ビジネススピードの変化

市場環境の変化が激しい現代では、新しいサービスや業務改善を素早く実行できるIT基盤が求められます。クラウドであれば、数分〜数時間でサーバーを用意でき、試行錯誤を前提としたシステム構築が可能です。

「作ってから考える」ではなく、「試しながら育てる」ための基盤として、クラウドは非常に相性が良いと言えます。

働き方とセキュリティの変化

テレワークや外部委託の増加により、社内ネットワーク前提のシステムは限界を迎えています。クラウドは、場所に依存しない安全なアクセスを前提に設計されており、現代の働き方に適した基盤です。

最新技術へのアクセス

AI、データ分析、IoTといった新技術の多くは、クラウドを前提に提供されています。オンプレミス環境だけでは、これらの技術を迅速に取り入れることは困難です。

クラウド移行は、単なるインフラ刷新ではなく、将来の技術活用への入口でもあります。

なぜ「今」クラウド移行なのか

クラウド自体は新しい技術ではありません。しかし現在は、サービスの成熟、セキュリティ水準の向上、国内リージョンの整備などにより、業務利用における現実的な選択肢となっています。

また、多くのオンプレミス環境が更新時期を迎えつつある今、「同じ構成をもう一度作り直すのか」「次の10年を見据えた基盤に変えるのか」という判断を迫られています。このタイミングでの選択が、将来のITコストや運用負荷に大きく影響します。

クラウド移行は目的ではなく手段

重要なのは、「クラウドに移行すること」自体が目的ではないという点です。コスト削減、運用負荷軽減、事業スピード向上といった目的を達成するための手段として、クラウドをどう使うかを考える必要があります。

そのためには、自社の業務やシステム特性を理解し、段階的に移行戦略を描くことが不可欠です。

次回予告

次回は、クラウド移行を考える上で避けて通れない「IaaS・PaaS・SaaSの違い」について解説します。それぞれの特徴を整理し、自社に合った選択肢を見極める視点を紹介します。